ゲームについて思うこと


リアル系のレースゲームの操作について

クルマはコントローラーで運転できる?

物理エンジンによるレースゲームでは、現実のクルマの動きが再現されています。

クルマというものは、ハンドルを回すことでタイヤを動かします。
そのため、素早く適切な角度にタイヤを動かすことができます。

ゲームのコントローラーでは、スティックを倒して動かします。
スティックはパタッと一瞬で全開することができてしまいます。

クルマの運転とは、基本的にゆっくりとハンドルを動かすこともあれば、素早く的確に動かす必要も出てきます。

それをスティックで操作しようとした場合、わずかな指の加減で大きくタイヤが動いてしまいます。スティックのストロークとタイヤが動く量を考えると、繊細な操作はできません。

できる人がいたとしても、それは一握りの超人だと思います。

現実のクルマというものは、物理の法則に従って動きます。(クルマに限ったことではないけど) わずかなタイヤの角度の違いが、大きな挙動に現れます。

スティックでクルマの運転をするという行為そのものに無理があります。

ゲームのコントローラーはスティック

クルマの運転におけるハンドル操作を、そのままコントローラーので行うには難しいと考えられます。

しかし、レースゲームにてハンドルを操作するにはスティックということになります。
スティックでのクルマの繊細な操作が難しいのは、タイヤが動く角度に対して、スティックのストロークが小さすぎるからです。

よって、ゲームのコントローラーでクルマの運転を行うには、何らかの工夫が必要になります。

スピードが速いほどハンドルは切らない

通常、クルマを運転する場合、大きくハンドルを切る場面は交差点や駐車場くらいともいえますね。スピードが出ている場合は、ハンドルを切る量を小さくするという考え方があります。

シミュレーターによっては、普通のコントローラーでの操作性を高めるため、スピード感度という設定項目がある場合があります。
アセットコルサのコントローラー設定のスピード感度というものがあります。
スピードが上がるにつれて、ハンドルが切れる量が小さくなっていきます。

適切にスピード感度を設定することで、気持ちよくドライブすることができるようになると思います。

スポーツ走行はドライブ走行とは違う

スピード感度を設定することで、スティックでも滑らかな走りができると思われます。

しかし、それは安全運転のドライブ走行の場合のみです。
モータースポーツではタイヤのグリップの限界付近、いやグリップ限界を超えて横滑り状態で走ることもあります。

その場合、高速状態であっても、大きく素早くハンドルを動かす必要がでてきます。
クルマが横滑りした場合、適切にハンドルを切らないとスピンしてしまいます。

横滑りを立て直す時にハンドルを進行方向とは逆に切る操作をカウンターステアといいます。 スピード感度によって、ハンドルを切る量が制限されている状態では、カウンターステアを行うことができずにスピンしてしまいます。

よって、スピード感度による舵角制限は横滑りしないことが前提の走りとなります。
なので、スピード感度では、スティック操作でクルマの運転を再現することはできません。

素早い適切なハンドル操作

~クルマの運転はハンドルを回転させる~

クルマの運転における曲がる動作はハンドル回転で行います。
ハンドルでは比較的素早く任意の角度にタイヤを動かすことが可能です。

通常の運転の範囲ではハンドルを45°切ったら、どれくらクルマが曲がるのかはクルマによって違いますが、ハ1ンド1ルをまっすぐに戻すとどのクルマでも直進になります。

クルマが横滑り状態になってしまった場合、カウンターあてることが重要であり、瞬時にたくさんのハンドルを回す必要がでてきます。
カウンターを充てることで、ひとまずスピンは防げるかも知れません。 ですが、カウンターをあてた状態ではハンドルを逆方向に切っている状態になりますので、そのままでは逆の方向に向かってしまいます。
スピンが収まる前に、スピンの速度がゆっくりになったあたりで、ハンドルをまっすぐに戻す必要があります。

この任意の角度に瞬時にハンドルを操作するという動作はスティックを左右に倒す操作では難しいのです。


~スティックは上下にも入力できる~

コントローラーのスティックは上下方向にも入力できます。
グリグリと回すように動かすことも可能です。

スティックを回すようにハンドル操作を行えば、ストロークの小さいスティック操作でも瞬時に適切な角度にハンドルを切る動作を再現することが可能になります。

この操作方法では、普通のコントローラーでありながら、ハンコンのようにハンドルを操作することが可能です。

セルフステアという現象

クルマのハンドルというのは回すことでタイヤの向きを変えるだけではありません。
クルマのタイヤは地面と接しており、路面の抵抗を受けます。

路面の抵抗により、自動的にハンドルが動いたりもします。
物資というものは、抵抗の小さいほうに動く法則があります。

カーブでハンドルを切った後、手を離すとハンドルは路面の抵抗に合わせてシュルシュルと回転して、クルマは直進状態になります。

この現象をセルフステアといい。タイヤは路面の抵抗により、車体の進行方向に向かうように動きます。
この現象はグリップ走行だけでなく、ドリフト走行でも発生します。

このセルフステアという現象があるため、ドリフト時にカウンターが当てやすくなります。

リアルなレースゲームやシミュレーターで使用されるFFBハンコンでは、このセルフステアも再現されています。
ハンコンには必ずしもFFBが搭載されているわけではありません。FFBを搭載しているものは3万円を超える高価なものになります。 安価なハンコン(とはいっても、ハンコン自体が15,000円以上するから安くないけど)にはFFBはありません。当然セルフステアも再現されません。

コントローラでハンドルを動かすスティック操作では、このセルフステアという現象はありません。
セルフステアのない環境での物理挙動におけるハンドル操作は難易度が高くなります。

FFBハンコンでは、横滑り状態とほぼ同時にセルフステアにより、ハンドルが自動的に回転するため、ほぼ自動的にカウンターが当たりスピンがしにくくなります。
(自動でカウンターが当たるからといって、必ずしもスピンを防ぐことができないのがクルマであり、シミュレーターの挙動)

FFBのないハンコンやコントローラのスティックでは横滑り状態になっても、自動的にカウンターが当たることはないため、画面の視覚情報から横滑りを感じて適切な角度にタイヤの角度を合わせる必要があります。

FFBハンコンでは、適切な角度に近い角度に向かうように自動的にハンドルが回転します。
横滑り状態やドリフト状態のクルマには慣性があり、タイヤの抵抗や路面の抵抗があり、手を離せば必ずしも安定したドリフトになるわけではないので、ドリフト走行は奥が深いです。

FFBハンコンがあれば、誰でもドリフトができるとも限りません。
やはり、シミュレータであっても、ドリフト走行を身に着けるには、地道な走り込みが必要です。

ようするに、コントローラのスティックやFFBのないハンコンではドリフト走行におけるハンドル操作が非常に難しいということになります。

自動カウンター

モータースポーツのような走りをスティック操作で実現するには、カウンターステアをあてられるかということが重要になります。

適切なカウンターステアとはどういうものなのか?

安定したドリフト中のクルマは車体は斜めになっていても前タイヤは進行方向を向いています。
その場合、タイヤの角度はドリフト角度に近い状態になります。
スティックを離している状態で、タイヤが進行方向を向くようにアシストすることで、自動的にカウンターステアが可能になります。

クルマが旋回する場合のタイヤの角度と進行方向の差をスリップ角といいます。
スティック操作によって、スリップ角を指定するようにタイヤを動かすことで、ストロークの小さいスティック操作でも、繊細なハンドル操作が可能になります。

直進状態ではスリップ角は0°ですね。そこから、スリップ角が増えるとクルマは旋回するようになります。
スリップ角が大きくなるほど、よく曲がりますが、大きくなりすぎると(ハンドルを切りすぎてしまうと)タイヤが滑って地面をつかむことができずに曲がりにくくなります。
自転車で土の上や草の上を走るときにハンドルを切りすぎて曲がらずに転んだ経験がある人がいるかもしれません。
それと同じようなことが、自動車でも発生します。(物理の法則はすべての物体に当てはまります)

ようするに、スティック操作でスリップ角をコントロールするようにすることで、ストロークの小さいスティック操作でも、ハンドルを切りすぎることなく、快適にクルマを操作することができるようになります。

スリップ角を元にした、ステア・アシストはドリフトだけでなく、グリップ走行でも操作することができます。

グリップ走行でもリアル感を実現

スティックを倒したほうにハンドルを切るのではなく、スティックはあくまでプレイヤーの意思をゲームに反映させるためのもの。
そう考えて、レースゲームの操作を行う場合、状況に応じて自動的にハンドルが動いても操作に違和感を与えることはありません。

アシストによる、オートカウンターを搭載している場合、
スティックを倒した量 = ハンドル操作 ではありません。
車体の進行状態をもとにした、オートカウンターだけでなく、路面の状況に応じたハンドルへの反力もスティック操作で感じさせることができます。

クルマではタイヤと地面が接していて、タイヤとハンドルは物理的につながっています。よって、路面から受ける力によってハンドルが動くということになります。

コントローラー操作でありながら、路面から伝わってくる反力をプレイヤーに感じさせることが可能です。

クルマのタイヤにかかる力は常に一定ではありません。止まっている状態から加速すると前側が浮き上がり、後ろタイヤに力がかかります。 この場合、前タイヤに上からかかる力が弱くなるため、ハンドルは軽くなります。

走行状態から減速した場合、前タイヤに力がかかるため、ハンドルは重くなります。
(クルマが旋回を始めると、慣性によって曲がり続けようとする力も発生します。ハンドルは様々な力の影響を受けるため、単純にブレーキを踏めば重くなるというわけではありません。)

スティック操作に対して、路面からの状況よる力を与えることで、プレイヤーはゲーム内に表示されるハンドルを見ることで、ハンドルにかかる力を視覚的に感じることができます。
(自動的にハンドル(タイヤ)が動くため、挙動そのものから感じることもできますが、ハンドルを表示するとわかりやすい)

スポーツ走行においては路面からの情報(ステアリング・インフォメーション)は重要です。ステアリングを通じて路面の状況、タイヤのグリップ状態を探る手がかりになります。

シミュレーターではFFBハンコンを用いて、ステアリング・インフォメーションを感じることができます。

スティックで直接タイヤを動かす操作では、これを表現することができませんが、ステアリングアシストを搭載すれば、このFFBハンコンにおけるステアリング・インフォメーションに近いものを表現することができます。

ハンドルが重たい時は、スティック入力に対してゲーム内のハンドルの動作が遅くしたり、ハンドルが軽い時は、ゲーム内のハンドルの動作を速くしたりすることができます。

大きく変化させてしまうと操作性を損なわせてしまいますが、わずかに操作の変化を加えることで、プレイヤーは変化を感じることができます。

このようにステアリング・アシストによって、FFBハンコンのようなステアリング・インフォメーションを表現することができるので、普通のコントローラーでもシミュレータとしてクルマの挙動を感じて楽しむことができます。

アシストといってもコンピューターが勝手にやってくれるわけではない

レースゲームによるアシストというのは、初心者が使うもの、ゲームに慣れてきたら、アシストはOFFにするもの。そういうに認識を持っている人は多いと思います。

しかし、ここでのカウンターアシストというのは、自動的にカーブに合わせてコンピュータがハンドルを操作してくれるわけではないということです。アシストがあるからといって、誰でも簡単にドリフトでコーナーを曲がることができるというわけではありません。

アシストがあってもスピンやコースアウトはします。ここでのアシストというのは、FFBハンコンの持つセルフステアを疑似的に再現したものにすぎません。
スティックを離すことでスリップ角が0°という理想的なカウンターステアに近い動きになるから、簡単操作になると思う人がいるかもしれませんが違います。
このアシストでドリフト中にスティックを離した場合、コーナーの外側に向かうかもしれません。

しかし、ドリフトの操作はハンドルだけではありません。
アクセルの踏み方によっては、巻き込んだりもします。
アシストがあったとしても、思い通りにカーブに沿ってマシンをコントロールすることは簡単ではないということです。

スティックを離した場合にタイヤが進行方向を向くので、自分でハンドルを戻すハンコンよりはスピンはしにくくなりますが……

アシストがあっても、物理で動くクルマを操ることは楽しい

シミュレーターというものは、物理で動くクルマを再現しています。(この世の物体は物理の法則によって動きます)

コントローラーで操作できるものは、ゲーム内のクルマのハンドルやアクセルやブレーキといったものであり、スティックを倒せば曲がるという単純なものではありません。

プレイヤーの入力によって、ゲーム内のクルマのハンドルが動き、ハンドルによってタイヤが動いて、路面のグリップ抵抗によって旋回を始める。旋回を開始すると慣性によって、内側に巻き込むように回転する力(ヨーモーメント)が発生する。切ったハンドルを戻しても、慣性の力によって曲がる力は残り、路面との摩擦によって減少していく。

アシストがあったとしても、それはハンドル操作を補助するだけであり(自動で何かをやってくれるわけではなく、一定の法則にしたがって、操作が補助される)
物理の法則を捻じ曲げることはない。

だから、アシストがあっても、スピンするし、タイヤが滑ってズルズルカーブの外に膨らんでいくアンダーステアも発生する。
物理の法則が再現されている以上、アシストがあっても物理で動くクルマを操る根幹の楽しさが損なわれることはありません。

物理で動くからこそ、操作をしているだけで楽しいという心地よさがあります。

物理を無視したり、物理で動いているように見せかけている、見た目がリアルっぽいゲームでは味わえない楽しさがあります。

シミュレーター系レースゲームではアシストが必要

コントローラーとハンコンではクルマを自在に操る操作の難易度が根本的に違います。

コントローラーで楽しめることがゲームでは大切です。 ですが、実際の商用の有名ゲームでは、コントローラーとハンコンで挙動が違うものが目立ちますね。

コントローラでは何らかの補正があって、ハンコンと同じく動きにならないということです。

シミュレーターとは、物理で動くものの動きをシミュレートしたものであるべきだと思います。コントローラでは何らかのコントローラでは何らかの 物理の法則に対して、何らかの補正がある場合はそれはシミュレーターではない。と私は思います。

物理で動くクルマを、アシストなしの普通のコントローラーで操作することは難しいので、物理ではない何かで動いているゲームは多いと思います。

ですが、物理で動くクルマでも、このようなアシストを搭載することで、コントローラーでも操作できるようになるのです。

スリップした時に自動的にハンドルが回転するセルフステアの再現。
路面の状況やタイヤのグリップ状態を探るためのステアリング・インフォメーション。これらをコントローラーでも実現することができます。

そうなると、コントローラーでもハンコンでも、同じ挙動で同じような感覚でクルマを操ることができます。

シミュレーターはシミュレーターであってほしい。

これからのレースゲームでは、セルフステアを再現したステアリングアシストが必要なのではないでしょうか?

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